「働き方改革」「イクメン」なんて言葉もよく聞かれますが、男性が育休なんて現実的ではない、と考えている人もまだまだ多いのが現状でしょう。
先日フィジーで出会った大畑愼護(おおはた しんご @ikukyuiju)さんは、育児休業を1年間取得、子ども3人を抱えてフィジーに短期移住しているというツワモノです。
実は、物価の安いフィジーなら、育児給付金だけで十分に生活できるし、「育休移住」は通常の移住に比べて実現のハードルが低いのだそう。
今回は、そんな大畑さんに、「育休移住」という選択肢の可能性について教えていただきました。
インタビュー前編では、海外移住を決めたきっかけや、移住準備や費用について、具体的にお伺いしていきます!
目次
育児休業を取って海外移住しようと思ったきっかけ

— 本日はよろしくお願いします。早速ですが、フィジーにはいつから移住してきているんですか?
夫:2018年7月からです。4月後半から育休を取得し、5月に第三子出産、その後フィジーに滞在しています。
— 育休を取ってフィジーに来ようと思ったきっかけは?
夫:家の壁に貼ってあった、妻の「海外で3か月以上暮らす」という付箋を見たことです。しかし、海外で暮らすことを叶えたいと思っても、退職も転職も考えられませんでした。
1年ちょっと前、日本で勤めている会社の社長が「フィジーで1年の海外育休生活。南の島で「育休」してみませんか?」という記事をFacebookにシェアしていました。軽い気持ちで「3人目はこれかな」とコメント付きでシェアをしたら、すぐに社長から「いいよー(笑)」というコメントが入ってきたんです。そうこうしているうちに、3人目の妊娠がわかったんですね。それで、本当に行けるかもしれないと思い始めて。
— すごく理解のある社長さんですね!
周りからのポジティブな反応に背中を押された
— 海外移住には奥さんも賛成していたんですか?
妻:賛成していませんでした。私がその話を初めて聞いたのはつわりのときで、精神的にも不安定でネガティブ思考に陥りやすいというのもあり、当時は、「突然すぎるし、そんなの現実的にありえない」と本気にしてなかったですね。「海外で3か月以上暮らす」の付箋も老後のつもりで書いたものでした(笑)。
— いきなり移住って言われてもよくわからないですよね。
妻:不安な要素しかないですよね。そもそも英語話せないし、新生児って何歳から飛行機乗れるの?どんな病気にかかる可能性があるの?病院はあるの?とか、フィジーってどんな食べ物あるの?とか(笑)。
— 日本で子育てするのですら大変なのに。
夫:そうですよね(笑)。なので、細かいところも含めて不安を全部出して、1ヶ月ぐらいかけて色々シミュレーションしていました。結局、妻はそれでも最後まで乗り気じゃなかったんです。一方、呆れ半分で周りの友人に話してみると、反応がすごく良かったんですよ。「フィジーに移住!?そんな方法があったの!?」「行きなよ、羨ましい!南の島!」みたいな(笑)。周りからのポジティブな反応が、最終的に妻の背中を押してくれたのかなと思います。
— 周りの応援あっての育休移住なのですね。ちなみに、大畑さんご自身の海外経験は?
夫:海外旅行や短期留学の経験はありますが、長期滞在はしたことなくて。
妻:私も海外はほとんど初めてでした。
英語圏、異なる価値観、豊かな自然の3要素が揃っていた

— きっかけは「海外で3か月以上暮らす」という付箋ということでしたが、移住先は最初からフィジーに絞っていたのでしょうか?
夫:いえ、もちろん他の選択肢も検討しました。もともと育休移住を通して、子ども主体で子育てができる環境、また親自身の成長にも繋げられるような、新しい価値観を体験したいと思っていたんです。移住先を決めるときの条件も考えましたが、(1)英語が身について、(2)日本と全然違う価値観を持っていて、(3)子供が遊びやすい自然豊かな南国というこの3つの条件でフィジーが浮上しました。
移住前にした8つの準備

夫:友人はみんな応援してくれましたが、身内はかなり心配していました。でも、過剰なほど細かく準備したので、少し安心してくれたと思います。
— 渡航前の準備というと、具体的には何が必要なのでしょうか。
夫:具体的には、次のような準備を進めていきました。
- 育児休業申請に関する手続き
- 渡航に関する手続き
パスポート、航空券の手配、海外旅行保険の加入、ビザの確認など - 住居に関する手続き
フィジーで家を探す期間に住むホテルの手配、日本の賃貸マンションの引き払い、家具の保管や処分など - 役所に関する手続き
住民票、子ども医療証、児童手当の移転など - 医療に関する準備
予防接種、常備薬、英語版母子手帳の手配、フィジー医療情報の確認など - お金に関する準備
ネットバンキング、インターナショナルキャッシュカードの開設など - 国内の定期支払サービスに関する手続き
携帯電話の休止、生命保険見直し、その他月額課金サービスの解約など - 荷造り
夫:実は、これらの「準備することを確定させるための情報収集」がとても大変でした。インターネットで調べても、育休中に移住した人の情報が全然ありません。なので、例えば病院の海外渡航外来で、渡航前に受ける予防接種の種類や、乳児の予防接種は日本とフィジーどちらで受けさせるべきか、その接種スケジュールはどうすべきかなどを医師と相談したり、区役所で住民票を国内に残すべきか否かを聞いたりもしました。
— お話を聞くだけでも大変そうです……。移住の準備にはどのぐらいの期間をかけましたか?
夫:7月初旬から移住生活をスタートさせたのですが、本格的に準備を始めたのは育休をとった4月後半。だから、準備期間はだいたい2ヶ月半ですね。
育休中の収入だけで生活費は十分賄える

— 移住の費用についてもお伺いしたいのですが、フィジーでの育休移住にはどのぐらいのお金がかかるのでしょうか。
夫:まず、家族5人分の往復航空券、海外旅行保険、予防接種などで渡航前に使ったお金は約75万円です。
こちらでの生活費については、保育園に子ども2人を通わせて、月20万円ほど。例えば、家賃は7.5万円、食費は4万円ぐらい、あとは水道光熱費、保育園料や娯楽費などです。
現地生活費
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 家賃 [4LDK] | 7.5万円/月 |
| 食費 | 4万円/月 |
| 光熱費 | 5千円/月 |
| 教養娯楽費(旅行含まない) | 3万円/月 |
| インターネット・携帯代 | 3千円/月 |
| 保育料(2人分) | 4万円/月 |
| 合計 | 19.3万円/月 |
渡航関連費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 航空券 [日本・フィジー] | 13.5万円(往復・5人分) |
| 航空券 [フィジー・オークランド] | 3万円(往復・5人分) |
| 海外旅行保険 | 19.5万円/8か月(5人分) |
| 合計 | 52.5万円 |
渡航準備費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 予防接種 | 6.5万円(5人分) |
| 携帯電話契約解除・休止費 | 4.5万円(2台分) |
| 引っ越し費 [東京・静岡] | 10.5万円 |
| 合計 | 21.5万円 |
妻:水道光熱費はすごく安くて、ありがたいです。ガスはプロパンなのですが、スーパーなどでガスボンベを買って、自分たちで家まで運んで来て、セッティングまでしなきゃいけなくて、結構大変でした(笑)。

— それは日本じゃ考えられないですね!では、育休中に入ってくるお金は何があるんでしょうか。
夫:育児休業給付金と児童手当です。私たちの場合、すぐに帰国する可能性があったので住民票は日本に残してあります。そのため児童手当がもらえます。児童手当は子ども3人分で毎月4万円ですね。こちらの生活費に関しては、夫婦2人で育休を取れば、給付金とあわせてお釣りがくるぐらいです。育休取得者が1人だけだとちょっと持ち出しがあります。
— 育休中の収入だけで十分生活できるんですね!思っていたよりもお金かからないかも。
夫:それから、帰国後の入居費(敷金・礼金など)、必要な生活用品を買い足したりする分で、50万円程度見込んでます。トータル的に育児給付金で賄えますが、支給タイミングと実際に使うタイミングが異なるので、そこは事前に計画が必要です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 引っ越し費 [静岡・東京] | 10.5万円 |
| 入居費 | 40万円 |
| 合計 | 50.5万円 |
観光ビザで4ヶ月滞在後、NZでビザをリセット、フィジーへ再入国

— フィジーには観光ビザ(ビザなし)で入国しているとお伺いしましたが、滞在期間や今後のスケジュールについて教えてください。
夫:はい、フィジーは観光ビザで過ごせる4ヶ月間ギリギリまで滞在する予定です。そのあとは、ニュージーランドに移動し、観光ビザの滞在期限をリセットさせてフィジーに戻ってくるつもりです。でも、もしかしたら他の国に行く可能性もあるかも?などいろいろ考えているところですね。日本への帰国は早くて11月、遅くても2月末までにはと思っています。
妻:長男が来年から小学生になるので、保育園の卒園式に合わせて帰ろうと思っていたんです。でも、海外の人たちが長期の休みをとって、すごく楽しそうに家族旅行している光景を目の当たりにすると、日本の義務教育の期間だからとか、絶対この日までに帰らなきゃとか、深く考えなくてもいいかなとも思い始めています。
— 移住というと腰を据えてというイメージがありましたが、すごく自由に予定を組み立てられていて、なんだかワクワクします!日本はどうしても「こうしなきゃ」「こうあるべき」となりがちですが、いろいろな形があっていいんだなと勉強になりました。
育児休業はキャリアアップにつながる?

— ご自身のキャリアを考えると、育休を取ったり海外に行ったりすること自体ハンディキャップと捉える人もいると思いますが、そういう不安はありませんでしたか?
夫:私たちは夫婦は共に31歳で、子どもだけじゃなく親も一緒に成長していく時期だと考えています。このフィジーの育休移住を、むしろ自分たちのキャリアにつなげていきたいという気持ちがあったので、不安はないですね。ちょっと独特な考え方かもしれませんが、道を外れると、新しい道ができてくるのではないかと期待していて。
— それは素敵な考え方ですね!
夫:共働きの子育て家庭って、自分自身の自己研鑽のために時間もお金もあまりかけられないので、留学したくても諦めてる人が多いと思うんです。でも育休移住という方法を使えば、夫婦そろって留学できているようなものですよね。英語を習得できれば、自分にとってブランクではなくブラッシュアップになります。日本と異なる環境で1年間過ごす中で得られる価値観も、自分の稀少性や価値を高めることにつながっていくはずです。
親になったからといって、何かを犠牲にしたり、我慢したり、諦める必要もない。育休移住は、私たち子育て世代の課題解決につながる選択肢のひとつだと考えています。こんな選択肢があれば、「結婚はコスパが悪い」とか「子どもが生まれると自分のやりたいことが出来なくなる」なんて言われないんじゃないかな。
— 大畑さんみたいにポジティブに捉えられると、本当に何事もうまくいくような気がします。でも例えば、英語が喋れないからそもそも行けないんじゃないかとか、仕事を1年も休むことで金銭面、キャリア面に不安を抱えて、一歩を踏み出せない人も多いのではないかと思うのですが……。
夫:恥ずかしながら、私も英語力は“旅行英語レベル”です。ジェスチャーと単語でなんとか買い物が出来るくらい。妻は英語を話せません。ですが、周りに助けられながらフィジーに家を借りたり、子どもの保育園を探したりすることは出来ました。
仕事に関しては、私は恵まれていました。育休移住に関しても、社長が一番応援してくれたんですよ。本当に円満に育児休業に入れました。しかも、もし途中で育休移住が嫌になったらいつでも復帰してくれていいと。決めたことを変えてもいいと言ってくれた会社だったから、良かったんだと思います。
— うらやましいほど、素敵な会社ですね。
夫:もちろん、育休移住をやる以前に、日々の育児との両立で苦しんでいる人も知っているし、組織風土的に育休を取りづらい人が多くいることも理解しています。だからこそ、たまたま機会に恵まれた私が育休移住をすることによって前例を作って、他の人が続いてくれたら嬉しいですね。「育休移住.com」のサイトも育休移住のマニュアルづくりのつもりで立ち上げたので、家族で海外移住したいと思っている人にぜひ見てみてほしいです。

大畑さんのサイト「育休移住.com」は、育児休業をとって海外に短期移住するための方法や、フィジー移住の様子がわかる現地情報などが満載です。また、本記事でも使わせていただいているお子さんの写真は、大畑さんのインスタグラムから許可を得て使わせていただきました。どちらも要チェックですよ!
インタビュー後編では、海外移住中のリアルな生活の様子や、フィジー生活のメリット、デメリットなどについてお伺いします!
大畑さんインタビュー後編
【フィジーで育休移住・後編】海外での子育てで苦労したこと


