海外の教育現場の第一線で活躍するも、第一子出産を機に退職、小さな子どもを抱えながら、ひとり起業し、フィジー国産のドライフルーツの会社を経営する「永崎 優(ながさき ゆう)」さん。インタビュー前編では、優さんの生い立ちやフィジーでの社会人人生について詳しくお話しいただきました。
後編となる今回は、優さんがなぜ起業という道を選んだのか、そして、フィジーならではの会社経営の苦労やこれからの展望についてお伺いしていきます。
インタビュー前編はこちら
目次
プロフィール
永崎 優 (ながさき ゆう)
1983年兵庫県生まれ。大学卒業後、フィジー共和国にある語学学校と公立高校にて勤務。2012年、地球一周ピースボートの通訳ボランティアとして乗船。
2017年、フィジー初の国産果物を使用した、砂糖不使用/無添加のドライフルーツ製造会社「MALEKA GARDEN」を起業。フィジーのお母さん達が子どもを連れて働くことのできる環境を作り、身体に優しいドライフルーツを作っている。2児の母。
>>MALEKA GARDEN
出産を機に「天職」を辞める
— 語学学校のお仕事もとても順調そうに思ったのですが、退職されたきっかけは?
優:
きっかけは、長男の出産です。
— 休暇を取ってまた戻ろうというお考えは?
優:
学校の仕事は自分にとって天職だと心から思っていました。ですが、フィジーは産休/育休が合計3ヶ月しか取れません。そして、日本のように乳児を預かってくれる保育園は皆無です。仕事を継続するのであれば、生後2ヶ月の息子をベビーシッターに預ける必要があります。
何度も悩みましたが、子どもが小さいうちはできるだけ一緒にいたかったので、最終的に退職することに決めました。
— 情熱を注いでいた仕事を辞め、専業主婦になるのは大変な決断だとも思います。その時の心境はいかがでしたか?
優:
そうですね、出産から子育ての日々は、それまでの生活からガラッと大きく変わりました。家事と育児に没頭し、社会から離れるという孤独さを感じつつも、愛おしい息子のそばに居られる幸せで満たされていました。目の前で、息子が小さな身体で一生懸命生きている姿を見るのは本当に眩しくて、「この命を守らなければならない」という責任感にも包まれていたと思います。
— まさに新たなライフステージですね。
優:
はい。また、赤ちゃんだった息子を育てる中、「あぁ、私の母もこうして私を育ててくれていたんだなぁ」と、自分の幼少期の優しい想い出が、たくさん掘り出されていくような感覚を憶えました。
そのことによって、“自分も存分に愛されていたし、それだけで十分だった”と思えるようになり、それまで複雑だと思っていた家族との繋がりを、やっと、真っ直ぐな気持ちで肯定できたように思います。
MALEKA GARDENの誕生
— 次への一歩として「起業」を選んだ理由を教えてください。
優:
息子が1歳になり、1人で歩き始めた頃くらいから、「この子はもう、きっとすぐに私のもとから巣立っていく。私も、私の人生を歩まないと」という気持ちが芽生えてきました。
優:
昔から、目標に向かって邁進したい性格だったので、もう一度、心の底から胸が熱くなる何かをやりたい。でも、まだ小さい息子と離れてまで仕事はしたくない。そんな欲張りな私は、次の3つの条件をふまえてできるものはないか、と考え始めました。
- 息子と一緒にいながらできること
- 自分が好きだと思えること
- フィジーでは新しい事業で、小さくても社会に貢献できる仕事
でも、残念ながらフィジーで条件に合う仕事は見つかりません。だったら、一から作るしかない。そんな風に、毎日ふとした時に思いを巡らせていました。
そしたらある日突然、「フィジー国産の無添加ドライフルーツを作ってみたらどうか」と一つのアイディアが浮かんできたんです。
— 「国産の無添加ドライフルーツ」ですか。
優:
実はフィジーは、南国で果物が豊富なのにも関わらず、輸入品のドライフルーツしかお店で販売されていませんでした。しかも、全て砂糖や添加物が含まれる物ばかり。当時、国産のドライフルーツは一切売られていなかったんです。
— なるほど。
優:
思い立ったら居ても立っても居られない性分なので、少しずつアイディアが固まっていった数日後には、フルーツを乾燥させる機械を購入。天日干しと機械での乾燥を比較するなど、実験を何度も繰り返しながら試作品を作り、友人に配って感想を聞き回りました。
— さすがの行動力です!
優:
準備段階のこの時期、1歳の息子にはまだ授乳していたこともあり、私が夜中にパイナップルを切っている時に泣き出したりして大変だったのを覚えています。また、外国人としての会社登記の手続きが思うように進まず諦めかけたこともありました。
でも、毎日朝が来ると、不思議と「よし、今日もやってみよう!」と、前向きなエネルギーで満ち溢れ、2017年8月、ようやく会社設立登記を終えることができました。
女性のための社会貢献
優:
またこの時、「たった3ヶ月の短い産休・育休」という、私が前職を退職したのと同じ理由で働くことを諦めざるを得ない女性がフィジーにもたくさんいることを知りました。
フィジーは大家族が多いため、多くのお母さん達は、家族の誰かに子どものお世話をお願いすることができます。ただ、フィジーも発展を遂げるうちに核家族が増え、ベビーシッターを探さざるを得ないという状況にいるお母さんも増加しています。
他国のような、きちんとしたベビーシッターの制度もないし、見つかったとしてもシッター代は家計にひびく。働くお母さんにとって、もっと働きやすい環境を作れないかと考えるようになりました。
— 自身の経験をもとに、同じ状況にいる女性の手助けができるのではないかと。
優:
はい。その思いから、自分と同じような状況のお母さんを積極的に雇い、子どもを連れて来ることができる環境作りにも取り組み始めました。
— 素晴らしい社会貢献です。
フィジーの自然の恵みを凝縮したドライフルーツ
— 優さんのドライフルーツの特徴は?
優:
噛めば噛むほど、フィジーの果物の自然な甘さを味わうことができる、身体に優しいドライフルーツです。一般的に売られている砂糖入りのものとは異なるので、最初の一口は、ちょっと不思議な感じがするかもしれません。
— ドライパイナップルはお花みたいで可愛らしいですね。
優:
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、フィジーのパイナップルは芯まで食べられるんですよ。輪切りにしてじっくり丁寧に乾燥させているので、芯の部分も美味しくいただけます。
交渉や販促……経営で苦労すること
— 空港の免税店でも優さんのドライフルーツを見かけました。免税店のような大きなお店に置いてもらうためにしたことはありますか?
優:
フィジーでは、空港にも免税店を持つような大きなデパートが3つあります。私は、全ての本社に直接サンプルを持って、商品の説明と交渉をしに行きました。
— 直談判でも話を聞いてもらえることもあるんですね!さすがフィジーです。
優:
苦労も多くありましたが、口コミなど徐々に評判が広がって、比較的販促は順調に進んだ部分もあるかもしれません。地元の新聞に掲載していただいたり、2019年にシドニーで開催された「Food Expo」にも参加させていただくなど、少しずつ海外の人にも知ってもらえる機会が増えてきました。
— その他、経営で大変なことはありますか?
優:
いくつかあります。例えば、果物が期日通り届かないことがある、停電が起きると機械が動かせないなどですね。
— 日本ではなかなか起きないことばかりですね(笑)。
優:
はい(笑)。あとは、店頭販売価格はお店側が決めるので、卸値から大きく上乗せされ、想定外にも販売価格が高くなってしまうことがあるなども悩みのひとつですね。
未来へ向けて“今”を積み重ねていく
— 現在は2人目のお子さんもいらっしゃるのだとか。
優:
はい。第二子が生まれたのは、起業してからまだ1年経ったぐらいの時で、いまでも育児との両立が大変と感じることもあります。でも、夫の多大なる協力と理解のおかげで、なんとかやれています。
経営者としてまだまだ未熟な私が、今でもこうして継続できているのは、スタッフや家族、そして応援してくださっている皆さんのおかげだと、心底思っています。
— 最後に、今後の展望を教えてください。
優:
しばらくは、まだ小さい子ども達との時間を大事にしながら、今の仕事を継続して、商品の種類を増やしたり、海外への正式な輸出ルートを作りたいと思っています。
そして、子育てがひと段落したら、また新たな挑戦をしたいと思うようになる気がしています。
— 新たな挑戦ですか。
優:
新しい事業をしているかもしれないし、本来の夢であった、日本で英語教員をしているかもしれない。また長期で旅もしてみたいし、私は昔から音楽が大好きで、趣味で沖縄三線やギターなどを弾くのですが、いつか本気で音楽にも力を入れてみたい。
現在36歳なので、40代に向けてどんな“今”を積み重ねていくのか。大切な家族と共に支えあいながら、そして私たち家族と関わってくれている全ての皆さんに感謝しながら、これからも生きていきたいです。
永崎さん一家のこれからにも注目です!
優さんが代表を務める無添加ドライフルーツMALEKA GARDENホームページはこちら
>>MALEKA GARDEN
※日本からのネット注文も可能です!


