フィジアナカカオ

絶滅寸前のカカオを再生。日本人夫婦が挑むメイド・イン・フィジーのチョコレート作り【インタビュー前編】

日本でも近年話題になっているBean to Bar(ビーントゥバー)という言葉をご存知でしょうか?

Bean to Barとは、カカオの買い付け、焙煎、製造まで全て自社工場で行っているチョコレートのこと。実は、この言葉が誕生する前、2000年代前半に、南太平洋の楽園フィジーでのカカオ再生とチョコレート作りに挑戦する日本人夫婦がいました。

今ではフィジーで知らない人はいないほど有名になったチョコレート「フィジアナカカオ」を経営する図越智仁さん、治美さんです。

メイド・イン・フィジーにこだわり、世界品質のチョコレートを製造するご夫婦。今回は、奥さんの治美さんに、インタビューを敢行!カカオ再生プロジェクト立ち上げの経緯やこれまでの軌跡などをお伺いしました。

移住後始めたのは日本食レストランだった

※以下、図越治美さん談

私たちは、家族旅行で初めて来たフィジーに魅了され、約15年前に家族5人でバヌアレブ島に移住してきました。

そして移住してから約1年後、機会に恵まれ日本食レストランを始めることになりました。

港沿いのすごくロケーションの良いところで、半分陸で半分海のような感じなんですが、満ち潮になると海の上になるんです。お店の脇には、ヨットが横付けできるようなデッキもありました。
実はサブサブは、毎年行われる世界一周のヨットレースの中継地点にもなっていて、世界中のクルーザーが立ち寄る場所でもあります。日本食の評価は高く、口コミが広がってお店は軌道に乗っていきました。

カカオとの出会いが大ヒットメニューの誕生に

そんなある時、長男が近所のおばさんから美味しいよ、と渡された大きなフルーツを持って帰って来たんです。初めて見るフルーツで、硬いしまだ青いから、熟れるまで置いておこうとフルーツバスケットに入れていたら、どんどん硬く黒くなっていきます。これはまずいと慌てて切ったら、すごく綺麗な真っ白の実で、食べたらライチのような甘酸っぱい味がしました。
でも、実は薄く周りについているだけで、ほとんどが種でした。それで、この種なんか見たことあるなあ〜と思って調べたんです。

それがチョコレートを作る原料、カカオとの初めての出会いでした。

どのようにチョコレートになるのか気になり、さらにいろいろ調べてみることに。
しかし、10年以上前のフィジーですから、インターネットもまともに動いているわけでもなく、情報がものすごく少なかった時代です。

わかったのは、醗酵して、天日に干して、焙煎して砕くというような簡単なステップだけでした。
その通りになんとなくやってみましたが、当然、うまくできるわけないですよね。(笑)

当時レストランでは、輸入したチョコレートとバニラアイスを混ぜてホームメイドアイスクリームをおいていたんですが、せっかくだと思い、焙煎したカカオをトッピングして「ダブルチョコレートアイス」として出してみたんです。これが驚くほどの大ヒットで。

日本食レストランなんですが、そのアイスが断トツで売上No.1になりました。水上飛行機に乗ってわざわざ海外から食べに来る人がいるぐらいの人気ぶりでした。

出る杭は打たれる

フィジーでは、みんな一緒でないとダメという風習が強くあります。
出る杭は打たれるという感じでしょうか、お店が人気になればなるほど、なぜか周りからつまはじきにされました。店舗の所有者であるオーナーからの妬みもあり、好調の中、わずか2年でレストランを閉めざるを得ない状況になってしまったんです。
悪いことは重なるもので、住んでいた家のオーナーからも即日、退去を言い渡されて本当に散々でした。

その後は仮住まいを探してなんとかやっていたんですが、仕事もないし、またレストランをやるにも良い場所がない。

どうしようという時に、ふと、大ヒットしたダブルチョコレートアイスのことを思い出したんです。

チョコレートって人を魅了する力があるかも?

「チョコレート」はもしかしたら人を魅了する力があるかもしれないと夫婦で話し合い、軽い気持ちで、チョコレートを作ってみようということになりました。

しかし、当時はチョコレートというとかなりシークレットの世界で、ごく限られた人しか作れませんでした。もちろん誰も作り方を教えてくれなかったので、独学で試行錯誤しながらやろうと決めたんです。

カカオ探しへの旅立ち

チョコレート作りの道のりは長く、原料の調達からとても大変でした。

まず、マーケットにカカオを買いに行ったんですが、なぜか全然見当たらないんです。農林省にも聞いてみたのですが、全く相手にされません。

調べてみると、実は、数年前まで、国がカカオをの栽培を推奨して高く買い取ってくれていたので、多くの農家さんが育てていたようでした。
しかし政権が変わったと同時にぱったり買ってくれなくなってしまい、農家さんたちも、ダロなど根菜類を育てた方が高く売れるし自分たちも食べれるということで、誰もカカオを作らなくなったのだそうです。

それでも諦めきれない私たちは、自らの足でカカオ探しを始めることにしました。ジャングルの中、もちろん車が通れる場所でもないので道なき道を歩き、バヌアレブ中、隅から隅まで回りました。

1日探しても見つからないことの方が多いし、運良く見つかっても、ジャングルと一体化しているような状態です。朝まだ暗いうちに家を出て、日が沈むとともに戻って来る、そんな生活を1〜2年続けました。

電気もガスもない森の中に住んでいたので、夜はろうそくとランタンで過ごしていました。食糧は自給自足でいけるので、幸いにも生活費はほとんどかかりませんでした。

奇跡の出会い

カカオ
そんな生活を続けていたある日、明らかに人が植えたような感じでカカオの木が2〜3本立っている場所を見つけました。しかも実がなっています。
カカオの木に沿って、まるでヘンゼルとグレーテルみたいにあとをついていくと、遠くの方からフィジアンのおばさんがこちらに向かって歩いてくるのが見えました。

そのおばさんは、私たちを見るやいなや、一言こう言いました。

「あなたたちのことを待っていました」

え?と混乱して、「実は私たちカカオをずっと探していたんです」と説明すると、「わかってますよ」とおばさんは微笑みうなずきました。

おばさんの家は、祖父の代からずっとカカオを作っていて、カカオの中で育ってきたのだと言います。周りの農家さんたちが次々とカカオ栽培をやめて木を伐採していく中で、おじいさんから「将来きっと買いにくる人が現れるから、切らずに待っていなさい」と言われていたんだそうです。

そして、「だから私はあなたたちを20数年間待っていたんです。」と。

その日、おばさんの家に行って、おじいさんがカカオ栽培をしている様子のいろんな写真を見せてもらっている時に、なんというか魂がタッチするような、言葉では表せないような気持ちになって。

その時にこれは私たちの使命、ミッションだと思ったんです。絶対にやっていこうと決心しました。

フィジーカカオ再生プロジェクト発足

そこから、カカオの再生プロジェクトを主人と2人で立ち上げました。しかし、いろんな農家さんたちに声かけても、みんな「カカオ」と聞くだけでピキーンと切れてしまうぐらい、誰もやりたがらなかったんです。

周囲からはもっとお金になることをした方が良いと何度も言われました。
でもどんなに侮辱されようと、苦難の道のりであろうと不思議と決意は揺るぐことはありませんでした。それは、決してお金儲けがスタートでなかった事、何よりもカカオ再生を使命とし自分達の進もうとする道を信じていたことでした。

フィジー原種のカカオの再生は根気のいるプロジェクトでしたが、続けていくうちに、少しずつ活動に賛同してくれる人が増え始めました。

ダークチョコレートは好まれない

また、カカオ農家の開拓と同時に行っていた、独学でのチョコレート作りも失敗の連続でした。
最初は売る相手もいなかったので、失敗から学び、ひたすらチョコレートのバーを作っていきました。

そんなある日、私たちがレストランをやっている時によく来てくれていた、サブサブの5つ星ホテルのマネージャーさんに会い、「今チョコレートを作っている。」と話しをし、その経緯を聞かれ私達の活動に賛同してくださいました。
そして、ご好意でそのホテルの宿泊客のターンダウン※で使ってくれることになったんです。

(※ターンダウン:高級ホテルなどでよくみられる、ベッドカバーなどを外し宿泊客の就寝の準備をしてくれるサービス)

最初はすごく喜びましたが、ある日突然、子供がターンダウン用のチョコレートを持って帰ってきたんです。それが何回か続いたので不思議に思い、調べるとチョコレートが苦すぎたと言うことでした。
ハウスキーピングの方々に聞くと、2個入りのチョコレートのうち1個食べて、捨ててしまう人が多いとのことでした。

その時は自分たちの好みで、カカオ80%ぐらいのダークチョコレートを作っていたのですが、お客さんには苦過ぎだと分かったんです。そこでカカオの割合を落としていったところ、その後は子供が持って帰ることもなくなり、さらに評判を聞いた別の5つ星ホテルからも話が来るようになりました。

本島での再出発

当時私たちは、バヌアレブ島の、本当にジャングルの中に住んでいるような感じだったんですが、リゾートホテルのオーナーはじめ色々な方から、本島(ビチレブ島)に来ないかという話が来るようになっていきました。最初はお断りしていましたが、子供達の将来なども考え、意を決して本島へ移り住むことに。

ナンディエリアのナマカに物置のような小さな工場を借り、改めてチョコレート作りを再開します。今思うと、チョコレートは作っているけど、壊れたおかまを使ったりしていて、まるで自動車の整備工場みたいなどうしようもない工場でしたね。(笑)

もちろん知名度があるわけでもなく、看板も出していないし、その時はただひたすら良い品質を求めて、チョコレートを作っているという感じでした。

しかし不思議なもので、どこからか噂を聞いて、欧米のホテルやリゾート、デパートのオーナーとか、あとは色々なNGOなどの団体など、本当に様々な人からご連絡をいただき、いろんな人が訪ねて来てくれる中でちょっとずつチョコレートが売れるようになっていきました。

売上ができてきて、チョコレートを練る機械も買うことができるようになり、だんだん良質なチョコレートができるようになってくると、デパートや大手のお土産屋さん、リゾートホテルからもオファーが来るようになっていきましたね。

ワイン&フードフェスティバルでの運命的な出会い

私たちの一番の転機となったのは、シェラトンホテルで行われた、国際的なイベント「ワイン&フードフェスティバル」でした。
そのイベントは、シェラトンを貸し切った大規模な展示会で、国内外の商品が集結して、多くのバイヤーや投資家も参加していました。海外の有名なシェフを呼んで、トークショーやデモンストレーションなどを行うブースもありました。

私たちとしては、そのイベントの開催自体はなんとなく聞いていたけど、縁がないと思っていましたね。
ワンブース出店するのに100万円以上かかるんですよ。一般参加するにも、3日間通しの入場券が約5万円。当時は本当にお金がなかったので、まったく縁遠い話でした。

そんなある日、突然そのイベントの主催者から電話がかかって来ます。なんと、「イギリスから来た有名なショコラティエがあなたたちに会いたいと言っているんだけど、シェラトンまで来てくれないか?」という依頼でした。

でも、私たちとしては全然違う世界の話で、イベントにも最初から行くつもりもなかったし、カカオで頭がいっぱいだったので、一度は断ったんです。

それでも、もう一度電話がかかって来たので、工場まで来ていただいて話をすることにしました。

海外の有名シェフって結構難しい人が多いイメージがあり、話半分にしようと夫婦で話していたんですが、来訪いただいて実際に話してみると、そのショコラティエがものすごく良い人だったんです。
すぐに意気投合し、イベント開催までまだ日にちも少しあったので、彼の要望で、一緒にカカオ農園を回ったりもして、すごく仲良くなりました。

最終的には、彼のサポートのおかげで、なんと無料でそのイベントに出展させていただけることになりました。

そのイベントを機に、フィジーでチョコレートを作ってるということを国内外問わず広く知っていただけたと思います。そこから大きく変わっていきましたね。

大手のお土産屋さんからも取り扱いたいとお話をいただき、今はそれぞれのお店でオリジナルの商品を作っています。多くの評価をいただき、2015年にはカタールで行われた世界貿易フォーラムにも参加させていただきました。

いま、チョコレート作りを始めて8年目になりますが、フィジーの農業や経済に貢献できるように、これからも頑張っていきたいと思います。

フィジアナカカオ詳細

フィジアナカカオ
2012年からは現在のデナラウ工場に拠点を移し、チョコレート生産を拡大。

フィジアナカカオは食品衛生管理の国際基準HACCP(ハサップ)も取得しており、品質と安全性の高さもお墨付きです。
さらに、2010年にはフィジー国総理大臣賞2部門を受賞し、国内外からさらなる注目を集めています。

フィジー国内では、現在大手のギフトショップ「PROUDS(プラウズ)」、「TAPOO(タプー)」、「jacks(ジャックス)」にて販売中です。添加物を一切使用しないピュアなチョコレートで、カカオの比率も高いので、高温のフィジーでも溶けにくく、お土産にも最適です。

また、こちらのオンラインストアでも購入が可能です。
>>MY FIJI STORE

お問い合わせ先

住所
Lot 7, Block 1, Denarau Industrial, Denarau Island,
Nadi, Fiji Islands

問い合わせ先
info@fijianacacao.com

公式ホームページ
フィジアナカカオ公式ホームページ(英語)

チョコレート作り・カカオ栽培が、フィジーの産業として今後ますます飛躍していくことを期待しています!

さて、インタビュー後編では、図越ご夫妻が3人のお子さんを連れてフィジーに移住した経緯や、当時の葛藤、異国での子育てなどについて詳しく聞いていきます。

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